カント哲学と「交流分析」で考える、より良い選択のためのヒント
- 横山三樹生
- 3月25日
- 読了時間: 4分
前回、カントの「普遍的なルール」や「善意志」の考え方についてお話ししました。
今回は、その考えに「交流分析」の視点を加えて、より現実的に「どうすれば良い選択が
できるのか?」を考えてみたいと思います。

交流分析とは?
「交流分析(Transactional Analysis)」は、TAとも呼ばれるエリック・バーンに
よって提唱された心理学の理論です。人間の「心の状態」を3つの自我状態に分類し、
より良いコミュニケーションや行動選択のヒントを与えてくれます。
3つの自我状態とは以下の通りです
Parent(親の心)→ 道徳的・規範的な考え方、ルールや価値観に基づいて行動する状態。
Adult(大人の心)→ 現実的で論理的に考え、冷静に判断する状態。
Child(子どもの心)→ 感情や欲求に従って行動する状態。
カント哲学と交流分析のつながり
カントが提唱した「普遍的なルールに基づく行動」は、交流分析でいう「Parent(親の心)」に近い部分があります。つまり、「こうするべき」「みんながやっても問題ない行動を取ろう」というのは、道徳的な視点を重視した考え方です。
一方で、「善意志」の概念は「Adult(大人の心)」に通じると言えます。善意志は、外からの評価ではなく「自分で考え、納得して選ぶ行動」だからです。
しかし、実際の選択では「Child(子どもの心)」の感情も強く影響します。とくに、迷ったり悩んだりすると、つい「感情のままの行動」を選んでしまいがちです。
実生活での活用方法
ここで重要なのは、「3つの自我状態のバランス」です。どれか1つに偏るのではなく、
3つの視点を組み合わせることで、より納得できる選択ができるようになります。
例えば、最近話題になったSNSでの誹謗中傷のケースを考えてみましょう。
「みんなが言っているから…」→ Parent(親の心)がネガティブに働いている状態。
「感情的にムカつく!」→ Child(子どもの心)が衝動的に反応している状態。
「本当にこの発言が正しいのか?」→ Adult(大人の心)が冷静に状況を見ている状態。
この3つを意識し、「感情が先走っていないか?」「本当に普遍的に正しい行動か?」と
考えることで、より冷静で良い判断かどうかを検討することが可能になります。
これらは、自律した社会人という立場であれば、当然大切にされるべき心理プロセスです。
「後悔」との向き合い方
選択をした後、どんなに考えても「本当にこれで良かったのか?」と悩むことがあります。それは「Parent(親の心)」が「もっと正しい道があったのでは?」と模索している状態であるかもしれません。そんな時こそ、「Adult(大人の心)」が重要です。感情に振り回されず、「あの時の自分はベストを尽くした」と受け入れ、次の行動につなげる。こうした冷静な内省が、次により良い選択をするための鍵になります。
失敗した時にどう向き合うか
どんなに慎重に選んでも、失敗することはあります。大切なのは、その失敗を「次の成功のための材料」に変えることです。失敗後の行動に、交流分析の視点で観察すると、このように捉えることができます。
自己批判型(Parentの暴走)
→「自分が悪い」「もっとちゃんとすべきだった」と、極端に自分を責め続ける。
感情的反発型(Childの暴走)
→「どうせ何をしてもダメだ」と、やけになったり投げやりになる。
再評価型(Adultの働き)
→「何が間違っていたのか?」と冷静に振り返り、次に活かす。
このうち、3つ目の「再評価型」が理想的な対応といえるでしょう。カントが言う
「選択に意味を持たせる」という考えとも一致します。
カントの哲学が「行動の正しさ」を説くなら、交流分析は「心の状態を整えて、より良い選択をする方法」を示してくれます。私たちは誰もが「悩み、迷い、後悔する存在」ですが、その中で「選んだ行動にどんな意味を持たせるか」が大切です。
日々の選択に迷ったとき、カントの教えと交流分析の視点を思い出し、
「自分の行動に納得できる選択」を目指してみてはいかがでしょうか。
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