心理学的視点で考える ペール・ギュントを支えた愛 ①
- 横山三樹生
- 4月2日
- 読了時間: 2分
第1回 ソルヴェイグの物語
人生の旅路で人は、何を見失い、そして何に帰ってくるのでしょうか。
イプセンの戯曲『ペール・ギュント』には、それを静かに問いかける存在がいます。
それが、ソルヴェイグという名の女性です。
ソルヴェイグは、主人公ペール・ギュントが若い頃に出会った女性です。
ペールは空想癖があり、責任を逃れ、現実から目を背け続けた男。
そんな彼に対してソルヴェイグは、ただまっすぐに愛を注ぎます。
やがてペールは、その愛の重さからも逃げるように、世界中をさまよい続けます。
彼は何者かになろうとし、何者でもなれず、挫折と後悔の果てに老いを迎えるのです。
帰還と再会
数十年の放浪の末、ペールは再び故郷へ。すべてを失い、何者でもなくなった男が、
ただ一つ覚えていたのは、かつて自分を愛してくれた女性の存在でした。
そして、ソルヴェイグの元にたどり着いたとき──
彼女は、何ひとつ責めることなく、静かに彼を迎え入れます。
その腕の中で、ペールは問いかけます。
「私は、誰だったのだろう?」
ソルヴェイグは、こう答えるのです。
「あなたは、私の愛した人だった」
ソルヴェイグの歌 〜変わらぬ愛の証〜
グリーグが作曲した《ソルヴェイグの歌》には、彼女の深く静かな愛が刻まれています。
ノルウェー語の原詩に基づく英訳の一部を日本語にすると、次のようになります。
「冬が来ても春が来ても私はあなたを待っていました。鳥たちが巣を離れたとしても
私の愛は変わりません」
この詩にあるのは、赦し・包容・無条件の愛です。
ペールがどれほど遠くに行っても、ソルヴェイグの心は、ずっと同じ場所にありました。
ん~めでたし、めでたし??

この有名な戯曲は、単純な愛情を語ったものでしょうか?
この物語の本質を、心理学的な視点と交流分析的な考察で考えてみたいと思います。
Commentaires