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管理職の罰ゲーム化は止められないのか?

執筆者の写真: 横山三樹生横山三樹生

管理職という「罰ゲーム」「管理職は罰ゲームだ」

この言葉を聞いたことがあるだろうか?


 かつては「出世=成功」の象徴だった管理職。しかし今や、プレッシャーや責任の重さ、

そして「部下の退職リスク」を一身に背負いながら、組織の満足度向上に気を遣い続ける

存在になっている。


 管理職は、部下の定着を必死に図るが、それでも若手社員は「シレッと」辞めていく。

まるで「新卒様」の機嫌を損ねないように振る舞うことが求められる中間管理職たち。

なぜ、こんな事態になってしまったのか? そして、この「罰ゲーム化」を止めることは

できるのだろうか?


 

管理職を追い詰める「3つの要因」


現在の管理職が直面する課題は、単なる「若手の気質の変化」ではなく、より構造的な

問題だ。主に3つの要因が挙げられる。


1. キャリア安全性の低下

 かつて、日本企業は「終身雇用」が当たり前だった。しかし、経団連が「就職の保証は

できない」と公式に発表したことや、大手企業の早期退職募集の増加により、「会社に居続けることがリスクになる時代」が到来した。SNSでは同世代の成功者の姿が嫌でも目に入り、「このままでいいのか?」という焦燥感を若手社員は常に抱える。結果、「ここにいても無駄では?」という考えが生まれ、転職のハードルはどんどん下がる。



2. 管理職の「監視」と「責任」の増加

 従業員満足度調査、エンゲージメントサーベイ、360度フィードバック…これらの評価制度が広まることで、管理職は「部下をいかに満足させるか」というプレッシャーにさらされるようになった。特に、「部下の退職」は管理職の責任として見られがちで、離職率が高いと「対策を考えろ」と責められる。しかし、どれだけ気を配っても、転職市場が活性化する中で「辞める人は辞める」のが現実だ。



3. 「自論はあるが理論はない」管理職の存在

 管理職が適切な人材育成の理論を学ぶ機会が少なく、「自分がこう育ったから、こう指導する」という属人的なマネジメントが横行している。これが、いわゆる「生存者バイアス」だ。「自分は厳しく鍛えられたから部下にも同じやり方をする」というスタンスでは、若手との溝は深まるばかり。また、「とにかく部下を甘やかせばいい」という逆の極端な対応も、管理職を疲弊させる原因になっている。


 

管理職の罰ゲーム化を止めるために


 では、この「管理職の罰ゲーム化」を終わらせるにはどうすればよいのか?


1. 「マネジメントの民主化」

 これまでのマネジメントは「上から下への一方通行」だった。しかし、これからは

メンバーも積極的に関与し、チーム全体でマネジメントを担う「マネジメントの民主化」が不可欠だ。例えば、職場の課題を全員で共有し、「良い職場を作るのは管理職だけの仕事ではない」という認識を広めることが重要になる。


2. 「変わるべき理由」と「変われる感」を伝える

厳しいフィードバックが必要な場面はある。ただし、「このままではダメだ」だけでは

なく、「あなたはこれができるから、こう変わればさらに成長できる」と「変われる感」

をセットで伝えることが重要だ。


3. デジタルケンタウロス時代への適応

 これからの管理職には「デジタルスキル」と「人間らしさ」の両方が求められる。

いわば、AIと共存する「デジタルケンタウロス」への変革が必要だ。これまでの

「経験と勘」に頼るマネジメントから、データを活用し、科学的なアプローチを取り入れることで、負担を減らしつつ成果を出すことができる。


 

「管理職は罰ゲーム」その呪縛から抜け出すには、「一人で抱え込まない」「マネジメントの民主化を進める」「理論を学ぶ」ことが鍵になる。そして、これらを学ぶ機会を得ることが、これからの管理職にとって最も重要な投資だ。


管理職の未来は、決して「罰ゲーム」のままではない。



オススメの書籍

イノベーションの民主化について論じた書籍、組織改革やマネジメントの参考になります。




 民主化するイノベーションの時代 単行本

 エリック・フォン・ヒッペル (著), サイコム・インターナショナル (翻訳)




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