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脱成長コミュニズム×公益資本主義×SINIC理論」がつくる未来社会 〜持続可能な日本の新たなビジョン〜

執筆者の写真: 横山三樹生横山三樹生

 近年、気候危機や経済格差の拡大が深刻化する中で、従来の「成長重視の経済モデル」の限界が指摘されています。こうした状況に対し、哲学者でもあり、マルクス経済思想の研究者である斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』では、「脱成長コミュニズム」という新たな経済思想が提唱されています。

 一方で、原丈人氏の「公益資本主義」や、オムロン創業者・立石一真氏の「SINIC理論」は、「人間の幸福」「社会全体の利益」に焦点を当てた持続可能な経済モデルとして注目されています。これら3つの思想を融合させることで、より現実的かつ実践可能な社会モデルの構築のきっかけになる視点はないか、探ってみようと思います。

持続可能な 社会とは?
持続可能な 社会とは?

① 「脱成長コミュニズム」「公益資本主義」「SINIC理論」の交差点


脱成長コミュニズムの思想


斎藤幸平氏の「脱成長コミュニズム」は、次の3つのポイントを重視します。

  • 経済成長に依存せず、持続可能な社会の構築を目指す

  • 物質的な豊かさではなく、人間の幸福や共生を重視する

  • 「無駄な消費」を抑え、「本当に必要なもの」を追求する


※ 公益資本主義の思想


公益資本主義は、次の点を重視します。

  • 企業の目的は「利益最大化」ではなく、「社会価値の最大化」である

  • 利益の一部は社会貢献や福祉、教育支援に活用すべき

  • 持続的な経済成長を目指しつつ、「人間中心の社会」の実現を目指す


※ SINIC理論の思想


SINIC理論では、次の社会モデルが描かれています。

  • 科学と技術の発展は、最終的に「人間がより人間らしく生きる社会」へと進化する

  • 技術は人間の幸福のために活用されるべき

  • 「最適化社会」では、AIが公平かつ効率的な社会設計に貢献する


② 実現に向けた具体的なアイデア


 これら3つの思想を融合させることで、次の4つの具体的な取り組みが現実的かつ

 実践可能な社会モデルとして提案できないだろうか?


ポイント①「地域通貨」の導入で、地域内の支え合いを促進する


 地域通貨は、特定の地域内でのみ使用可能な通貨で、地域経済の活性化や支え合いの

 文化を育む効果があります。


例えば、次のような仕組みが考えられます。

  • 地域内の商店での買い物や、地元のイベント参加者に「地域通貨」を付与

  • 地域の高齢者が「子どもの見守り活動」を行うと、その対価として「地域通貨」を受け取る

  • 地域通貨は、地元の農産物、飲食店、福祉サービスなどで利用可能にする


→  これにより、地域コミュニティの活性化と、人々の利他的行動が促進される効果が期待できます。


ポイント② 「コミュニティ型農業」で、地域住民が共同農業を営むモデルを推進


「脱成長コミュニズム」の思想を活かし、地域住民が共同で農業を営む「コミュニティ型農業」は、持続可能な食料供給モデルとして注目されています。


具体的には次のような取り組みが考えられます。

  • 地域住民が共同で農地を管理し、労働や収穫の成果を分かち合う

  • 地元の飲食店や福祉施設と提携し、地域内での「食の循環」を強化

  • 「農福連携」として、障害者が農業に参加することで、社会参加と生産活動の両立を実現


→ これにより、地域の雇用創出、食料自給率の向上、持続可能な農業の実現が可能になります。


ポイント③「社会貢献型ポイント制度」で、善意の行動に経済的メリットを付与


「公益資本主義」の理念を活かし、「社会貢献活動が報われる仕組み」として、社会貢献型ポイント制度が有効です。


具体的な仕組みとしては、以下のようなものが考えられます。

  • ボランティア、介護支援、地域清掃、子育て支援といった活動に参加すると、ポイントが付与される

  • このポイントは、公共交通の割引、地域商品券への交換、健康保険料の減額など、具体的なメリットに変換可能にする


  • →「善意の行動が経済的利益につながる仕組み」をつくることで、利他的な行動が自然と社会に浸透します。


ポイント④「AI活用の政策判断」で、持続可能な資源やエネルギー制御を行う


SINIC理論が提唱する「最適化社会」の考え方を活かし、AIによるデータ分析を活用した「スマートシティ」の導入が効果的です。

具体的には以下の取り組みが考えられます。


  • AIが「人口動態」「災害リスク」「エネルギー消費量」などを分析し、最適なインフラ整備を提案

  • エネルギーの消費状況をリアルタイムで監視し、無駄のない制御を行う

  • 各地域の特性に応じた「持続可能な資源管理モデル」を構築


→ AIを活用することで、無駄のない資源活用公平な政策判断が実現します。


「人間の善性」と「共感」に基づく社会モデルの実現へ


 斎藤幸平氏の「脱成長コミュニズム」、原丈人氏の「公益資本主義」、立石一真氏の「SINIC理論」を組み合わせることで、次のような社会の実現が可能になります。


  1. 「経済成長」ではなく「人間の幸福」を重視する社会

  2. 地域社会が主体となり、支え合いが循環する仕組み

  3. テクノロジーが人間の善性を引き出し、未来を最適化するモデル


    「AIが人間の可能性を引き出す社会」が、これからの日本が目指すべき未来の姿です。



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