認知症になったら、社会とのつながりは薄れていくものなのか。
岡山市で行われている「チームオレンジ」の取り組みは、そんな固定観念に揺さぶりを
かける新しいモデルだ。
これは、認知症の本人とその家族が、地域の中で希望を発信し、互いに支え合いながら
生活していくための仕組みである。チームオレンジの集まりは、堅苦しい会議ではなく、
アットホームな雰囲気のなかで自然に行われる。参加者は近況を報告し合い、その日の
やりたいことを自由に決める。認知症の方も、支援者も、家族も、誰もが「同じチーム」の一員として活動する。
この取り組みの重要な点は、「支援する人」と「支援される人」という関係を超えて、
認知症の方が主体的に関わることを前提としていることだ。地域の認知症サポーターは、
特別なことをするわけではない。ただ、認知症を正しく理解し、見守り、応援する。
それだけで、認知症の方や家族にとって大きな支えとなる。
参加者の声からも、その価値が伝わってくる。「ここに来ると元気をもらえる」「認知症になったときの不安が少し和らぐ」「入院や通院の体験を共有できて心強い」。こうした言葉の一つ一つに、社会の中で「共に生きる」ことの意義がにじみ出ている。
これは単なる交流の場ではない。チームオレンジの根底には、「認知症の人が地域でどのように暮らしていきたいか」という本人の希望を軸に、サポーターと共にそれを叶えていくという、新しい考え方がある。従来の「支援」という一方向の関係ではなく、「共に生きる」ための関係性を築くことが目的なのだ。
2030年、日本の認知症人口と地域医療の課題
この取り組みは、今後ますます重要性を増していく。厚生労働省の推計によると、2030年には日本の認知症患者数は約830万人に達するとされ、高齢者の約5人に1人が認知症を抱える時代が来る。特に、過疎地域では医療・介護リソースが不足し、認知症患者の生活支援が大きな課題となる。
地方では、病院までの距離が遠く、移動手段の確保が困難なケースが増えている。認知症の進行に伴い、通院が難しくなり、適切な診断やケアを受けられないまま孤立する人も少なくない。また、高齢化が進む地域では介護の担い手も不足し、「誰がケアをするのか」が喫緊の問題になっている。
このような状況の中で、チームオレンジのような「地域で支え合う仕組み」は、単なる
福祉政策の枠を超えて、地方創生や持続可能なコミュニティづくりの視点からも非常に重要な意味を持つ。地域医療と生活支援の可能性認知症の方が安心して生活を続けるためには、次のような仕組みが必要だ。
地域包括ケアの充実:訪問診療、遠隔医療、地域の診療所とサポートネットワークの強化。
移動支援の拡充:高齢者の送迎バスや自動運転技術を活用したモビリティサービスの導入。
地域コミュニティの活性化:チームオレンジのような取り組みを広げ、認知症の方が参加できる場を増やす。
テクノロジーの活用:認知症の方を見守るAI技術や、負担を軽減するスマートホームの普及。
こうした仕組みが整うことで、認知症の方が「支えられる側」ではなく、地域の一員と
して生き生きと暮らし続けることが可能になる。
このような社会の変化に対し、当社がが提供できる支援策は何だろうか。
① 認知症の方を支えるためのマニュアル作り
認知症の特性に配慮した業務マニュアルの作成
スタッフ向けのトレーニングプログラムの開発
職場の環境整備に関するコンサルティング
など企業や地域団体が認知症の方を受け入れやすい環境をつくるサポートだろうか?
② 飲食事業での雇用創出
HIT-LABが計画しているテイクアウト店舗「Comodo」では、認知症の方や障害者施設
と連携し、働く機会を提供する可能性がある。
「食」を通じた地域とのつながりの強化
様々な立場の方たちが「つながる場」を持ち、自信や生きがいを感じることができる。
地域と共に成長するビジネスモデルを模索していきたい。
私たちができること第一歩として、認知症サポーターの養成講座を受講するのもいいか
もしれない。岡山市では、無料の講座が開催されており、認知症の基礎知識や、
サポーターとしてできることを学ぶことができる。地域社会の一員として、できること
から始めることが、未来を変える第一歩になる。
私たちは、誰もがいつか認知症になる可能性がある。しかし、認知症になっても社会と
つながり続ける仕組みがあれば、それは「終わり」ではなく、新たな生き方の始まりに
なる。チームオレンジの取り組みは、そんな未来への希望を示してくれる。
認知症を持つ人が「生きる」ことが、地域とともにある。そんな社会を、
私たちはどう築いていくだろうか。
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