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財政政策の転換が日本を救う ~「公益資本主義」とAIが拓く新しい経済モデル~

執筆者の写真: 横山三樹生横山三樹生

 前回は、日本経済が30年以上にわたって停滞し続けた原因として、デフレ期の増税、財政赤字への誤解、将来への投資不足といった政策ミスがあったことを指摘しました。今回は、そうした状況を打開するために必要な「財政政策の転換」について、原丈人氏が提唱する「公益資本主義」の視点を交えながら具体的な方法を提案します。


①「財政赤字=悪」という誤解を解く


 長年にわたり日本政府や財務省は「日本の借金は危機的状況にある」と強調し、緊縮財政を推し進めてきました。しかし、この考え方には大きな誤解があります。


 日本の国債は「円建て」で発行されており、政府は必要に応じて通貨発行によって借金を返済することが可能です。つまり、日本はデフォルト(債務不履行)に陥るリスクが非常に低いのです。例えば、アメリカやイギリスも自国通貨建ての国債を発行しており、財政赤字を抱えながらも積極的な財政出動によって経済成長を実現しています。それに対し、日本は「借金を減らすことが最優先」という誤った思い込みに縛られ、必要な投資や財政出動を避け続けた結果、国民の生活が苦しくなってしまいました。


②消費税の完全撤廃で消費を促進

 

 財政政策の転換において、最も即効性のある対策が「消費税の撤廃」です。消費税は、消費するすべての人に同じ割合で課される「逆進性」の強い税制です。これは、所得の低い人ほど生活に必要な支出の割合が高いため、負担が重くなるという欠点があります。消費税が撤廃されれば、国民の可処分所得が増え、結果として消費が活性化し、経済の好循環が生まれます。


【具体例】

 消費税がゼロになれば、10万円の買い物なら1万円分が浮き、その分を他の消費に回せるようになります。これが積み重なれば、飲食業や小売業、サービス業が活気を取り戻し、雇用も回復していくのです。短期的な税収減を懸念する声もありますが、消費の回復により企業の利益が増え、結果的に法人税や所得税からの税収増が期待できます。これは「経済成長による税収拡大」を狙う通常誰もが理解できる考え方ではないでしょうか?


③「未来への投資」で経済活性化


 消費税撤廃と並行して、「未来への投資」が不可欠です。これは原丈人氏の「公益資本主義」の理念とも一致する考え方です。政府が積極的に資金を投じるべき分野として、以下の3つが重要です。


【1】インフラ整備

 先日発生した埼玉県八潮市における悲惨な道路陥没事故は、まだ記憶に新しいと思います。現実に日本では道路、橋、トンネルなどのインフラ老朽化が深刻化しています。私は2019年から講演会やSDGsにワークショップなどで、本件について危機とリスクを伝えてきましたが、現実感をもって捉える方は少なかったように思います。いま現実の危機として、

私たちの生活の上に重くのしかかってくる問題なのです。いま…これらの修繕や更新に投資することができれば、少なくとも地域経済の活性化や安全性の向上が確実に期待できます。さらに、AIを活用してインフラの劣化状況を予測し、効率的なメンテナンスを行うことで、コストを抑えつつ効果的な整備が可能です。


【2】農業の再生

 日本の農業は人手不足や高齢化が深刻化し、食料自給率の低下が進んでいます。ここでAIを活用し、ドローンによる農薬散布や自動運転トラクターの導入、データ分析に基づいた

最適な作付け計画の提案など、「スマート農業」を推進することで、農業の生産性と競争力を回復できます。


【3】科学技術への投資

 日本が再び世界の技術競争でリーダーシップを取り戻すためには、AI、量子コンピュータ、バイオテクノロジーなどの先端技術への積極的な投資が必要です。例えば、医療AIを活用した診断支援システムや、製造業における「スマート工場」技術は、すでに一部企業で成果を上げています。こうした成功事例を拡大し、日本の産業競争力を再構築する必要があります。


④AIによる公平な政策決定

「公益資本主義」を実現する上でカギとなるのが、AIを活用した「公平で透明な政策決定」だと、私は考えています。政治家や官僚の意思決定には、しばしば利権や癒着といった不透明な要素が介入します。国内の政治家は「国家や若者の未来を託すに値する人物が少なく」国際的リーダーシップを発揮できる人材や、意思決定する能力があるのだろうか?と思われる国会議員や地方議員で溢れかえっています。現在、進化を続けているAIを導入することで、膨大なデータを基に、より客観的かつ公平な政策判断のほうが、国民の幸せに直結するのではないでしょうか?


【具体例】

 例えば、公共事業の選定において、AIが「人口動態」「災害リスク」「地域経済の状況」

など多角的なデータを分析し、最も効果的な投資先を示します。これにより、特定の利権団体が優遇されるといった不公正な配分を防ぎ、より公益性の高い判断ができるのです。


AIの可能性こそ重要
AIの可能性こそ重要


結論:「未来を見据えた財政転換」で日本経済は再生できる


 日本経済再生のカギは、①「消費税撤廃」②「未来と若者への投資」③「AI活用による公平な政策判断」の3つです。これらを組み合わせることで、原丈人氏の提唱する「公益資本主義」を具体化し、短期的な経済回復だけでなく、長期的な持続的成長を実現できると考えます。


 次回は、こうした政策転換を踏まえ、日本が再び世界経済のリーダーとなるための具体的なAI活用の事例と、そのリスク管理について詳しく解説します。

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